有機溶剤中毒予防規則(有機則)や特定化学物質障害予防規則(特化則)、がん原性指針についての対策は各企業が責任を持って実施してください。
有機溶剤使用場所での法定表示が変わりました。(2015/1/1)→オフセット印刷工場の有機溶剤管理(日印産連) 全印工連(2013/7/11)→中小企業の安全衛生管理(PDF)
日印産連(2013/7/24)→印刷業等の洗浄作業における有機塩素系洗浄剤のばく露低減化のための予防的取組みについて
化学物質安全性データシート(MSDS)を収集公開(2013/7/30)→当組合ホームページ
日印産連「印刷職場の労働衛生管理」 貸し出します。
化学物質のほとんどが安全性未確認 20120615かんさい熱視線「胆管がん 相次ぐ謎の死」
共同印刷機材(2013/11/20)→代替製品のご案内(PDF)
日印産連(2013/11/9)→印刷事業所における化学物質による健康障害防止対策のポイント
日印産連→グリーンプリンティング資機材認定制度
全印工連(2013/7/23)→GP資機材認定「洗浄剤」への代替のご案内(PDF)

胆管がん問題、被害者全員と和解 大阪の印刷会社

日本経済新聞2014年10月22日  大阪市の印刷会社「サンヨー・シーワィピー」の元従業員ら17人が胆管がんを発症し、うち9人が死亡した問題で、同社は22日、大阪市内で記者会見し、全ての生存患者や遺族と和解が成立したと発表した。それぞれ1千万円超の補償金を支払うほか、再発防止に向け安全対策を講じることを和解内容に盛り込んだ。
 和解は9月25日付。辞任した山村徳唯前社長(68)は「胆管がんを多数発症させ、大変申し訳なく思う」と謝罪。業務で扱う有機溶剤が発症原因とされた経緯から、化学物質の安全性について専門家に調査を依頼する体制も整える。
 問題は2012年5月に発覚。大阪区検が今月16日、産業医の選任を怠るなど衛生管理体制に不備があったとして、法人としての同社と山村前社長を労働安全衛生法違反罪で略式起訴し、同社によるとそれぞれ罰金50万円の略式命令を受けた。

胆管がん原因?物質の発がん性を認定 国際がん研究機関

朝日新聞医療サイト2014年7月12日
 大阪市の印刷会社の従業員らに胆管がんの患者が相次いだ問題で、世界保健機関の国際がん研究機関(IARC)は12日までに、印刷機の洗浄用に利用され、原因物質と推定されている化学物質「1、2ジクロロプロパン」を「発がん性がある」(グループ1)と認定した。五つの分類で確実度が最も高い。危険性が世界的に認められ、規制などの対策が進みそうだ。
 IARCはこれまで、1、2ジクロロプロパンについて発がん性物質かどうか分類できない「グループ3」にしていた。専門家らは今回、日本での発症例などを検討し、科学的な根拠は十分と判断した。
 また、やはり原因物質と疑われている「ジクロロメタン」は、これまでの「グループ2B」(発がん性をもつ可能性がある)から「2A」(おそらく発がん性がある)に引き上げた。
 この問題をめぐっては、大阪市の「SANYO(サンヨー)―CYP(シーワィピー)」など全国の印刷職場で従業員らに胆管がんが続出。印刷機の洗浄剤に含まれる化学物質に高濃度でさらされたのが原因として、これまでに32人が労災と認定されている。

1,2-ジクロロプロパンを特定化学物質として規制

厚生労働省平成25年7月30日
胆管がん事案の原因物質の1つとして考えられる1,2-ジクロロプロパンについて、労働者の健康障害防止に関するリスク評価の結果に基づき、発がんのおそれのある物質として特定化学物質障害予防規則の措置対象物質に追加します。 これにより、1,2-ジクロロプロパンを用いる洗浄や拭き取りの業務に当たっては、化学物質の発散を抑制するための設備の設置、作業環境測定の実施、特殊健康診断の実施、作業主任者の選任、作業の記録等を30年保存することなどが義務付けられます。

印刷業の「全国多発」を否定 大阪市大が報告書

MSN産経ニュースウェスト2013年9月5日
 印刷会社の従業員らに胆管がんが相次いだ問題で、疫学調査をしている大阪市立大の円藤吟史教授(産業医学)の研究グループは5日までに、印刷業における胆管がんの「明らかな全国的多発」は認められなかったとする報告書をまとめた。
 グループは大阪市の校正印刷会社「サンヨー・シーワィピー」の従業員らが胆管がんを発症した問題を受け、同社の従業員らや印刷業界での全国的な発症状況を調べた。
 中小企業の従業員や家族ら約3500万人が加盟する全国健康保険協会の診療報酬明細書のデータを調べたところ、2009〜12年の胆管がん患者数は8855人。全体の約1%に当たる印刷業従業員とその家族の患者数は107人で、印刷業の患者の比率がやや高かった。発症リスクが高年齢層に比べ低いとされる30〜49歳でも、印刷業の発症者数の比率は他業種の同年代よりやや高かったが、いずれも統計的に明らかな有意差はないと結論づけた。
 またサンヨー・シーワィピーの元、現従業員326人の調査では、一般の人と比べて、校正部門の従業員の罹患リスクと死亡リスクはそれぞれ1242倍と644倍だった。

新たに北海道の印刷会社元社員を認定

MSN産経ニュース2013年8月1日
 印刷会社の従業員らが相次いで胆管がんを発症した問題で、厚生労働省の専門家検討会は1日、北海道の印刷会社に勤務していた50代の男性=平成16年に死亡=について、労災認定すべきだとの結論を出した。北海道労働局が労災認定の手続きを進める。
 厚労省によると、北海道の男性は作業で洗浄剤として使われる有機溶剤「1、2ジクロロプロパン」を高濃度で昭和60年から約11年間吸い込んでおり、それが胆管がんの発症につながった可能性が高いと結論づけた。
 一方、検討会は、労災申請が出ていたいずれも60代の男性2人(1人死亡)については、吸い込んだ化学物質の違いや濃度から労災を認めなかった。
 印刷会社の胆管がんをめぐっては、7月末時点で75人(うち48人死亡)の労災申請が出ており、全17人が労災認定された大阪市の印刷会社「サンヨー・シーワィピー」のほか、今回の1人を含む4人の労災が認められた。労災を認めなかったのは3人で、残る51件について、検討を続ける。

胆管がん、3人労災認定 宮城の2人も、全国計20人

朝日新聞2013年6月14日  印刷会社で働いていて胆管がんになった人や遺族から労災請求が相次いでいる問題で厚生労働省は13日、新たに宮城県の2人と、愛知県で働いていた1人の計3人を労災認定することを決めた。大阪以外での労災認定は初めて。認定者は合計20人になった。
 宮城の2人は同じ事業場で印刷機の洗浄作業をしていた30代と40代の男性。勤務先は東日本大震災で失われたが、この日の専門家検討会が、洗浄液に含まれる薬品「1、2ジクロロプロパン」に長時間、高濃度でさらされたことが発症原因になったと認めた。
 愛知で働いていた40代の男性も、洗浄液に含まれる薬品「ジクロロメタン」に長時間、高濃度でさらされたことが原因だと認定した。ジクロロメタンの原因認定は初めて。
 一方、営業職だった70代の男性(労災請求時点で死亡)については、仕事と発症の関係を認めなかった。
 今年3月と5月に、大阪市中央区の印刷会社「SANYO―CYP(サンヨー・シーワィピー)」に勤めていた20〜40代の17人(労災請求時点で7人死亡)が労災認定された。厚労省によると、この大阪の17人を含め、5月末までに全国で72人(同47人死亡)が労災認定を求めていた。(山本知弘)
 ■「環境悪くない」工場戸惑い
 「完璧に対応していたかと言われれば、落ち度があったのは事実。労災認定については、真摯(しんし)に受け止めたい」。労災認定が決まった宮城県の男性2人が勤める印刷会社(本社・東京)の管理担当者はそう話した。
 2人は宮城県の工場で20年ほど働いていたベテランで、マスクはせずに、発がん性を指摘されたジクロロプロパンを含む製品を使って印刷機のローラーを洗っていたという。問題が報じられた後、ほぼ同じ環境の東京工場で業者に環境測定を依頼すると「基準内。むしろ良い方だ」と言われた。労基署から問題点を指摘されたこともなく、管理担当者は「劣悪な職場環境ではなかった」という。
 宮城県に工場を持つ印刷会社の社員は「うちも似たような環境だった。どこで発症してもおかしくない」。別の業者は「何が引き金になったのか、究明してほしい」と話した。(高津祐典)

大阪労働局が家宅捜索へ、発端の印刷会社

MSN産経ニュースwest2013.4.2  印刷会社の元従業員らが相次いで胆管がんを発症した問題で、厚生労働省大阪労働局は2日にも、従業員の健康被害の防止措置を怠ったとして、労働安全衛生法違反の容疑で、発端となった大阪市中央区の校正印刷会社「サンヨー・シーワィピー」本社など複数の関係先を一斉に家宅捜索する。同監督署は3月に元従業員16人を労災認定したが、全容解明には強制捜査が不可欠と判断。裏付けができ次第、同容疑で同社と社長(66)を書類送検する方針。
 元従業員ら16人はいずれも男性で、発症時25〜45歳(平均36歳)。有機溶剤を含む洗浄剤を使い、印刷機械などに付いたインキを落とす作業に従事していた。
 同社を巡る胆管がん問題は、昨年5月に発覚。厚労省は同7月、同社地下作業場で原因と疑われた化学物質「ジクロロメタン」「1、2ジクロロプロパン」を含む洗浄剤を使って再現実験を実施。作業場の換気装置の構造上、汚染された空気の56%が還流し、ジクロロプロパンの濃度が許容範囲の最高21倍に達し、劣悪な環境だったことが判明した。
 厚生労働省の検討会は今年3月14日に公表した報告書で、洗浄剤に含まれる化学物質「1、2ジクロロプロパン」に長時間、高濃度でさらされたことが発症原因となった蓋然性が極めて高いと結論づけた。同社従業員の胆管がんによる死亡率は、日本人平均の約1200倍に上った。
 これを受け、同監督署は3月27日、全国で初めて16人の労災を認定。2月に労災申請した元従業員1人も近く認定される見通し。
 被害者を支援する関西労働者安全センターによると、16人のうち、労災申請後の1月に死亡した1人も含めた8人が既に亡くなっている。
 サ社の山村徳唯(とくゆき)社長(66)は3月28日の会見で「地下の作業場が危険な場所という認識はなかった」と釈明し、会社として遺族や元従業員らに補償する考えを示した。

胆管がん死亡 印刷会社社長が謝罪

朝日新聞デジタル2013年03月29日  従業員ら17人が胆管がんを発症し、うち8人が死亡している大阪市中央区の印刷会社「SANYO(サンヨー)―CYP(シーワィピー)」の山村悳唯(とくゆき)社長が28日、昨年5月の問題発覚後初めて会見し、謝罪した。労災認定を「厳粛に受け止める」と述べ、会社の責任として患者や遺族に補償する考えを示した。
 山村社長は冒頭で深々と頭を下げ、「心よりお見舞いし、亡くなった方のご冥福を祈り、ご遺族にお悔やみ申し上げたい」と用意した文章を読み上げた。
 社長会見が開かれなかった理由を問われ、「因果関係がわからず、労基署が調べている中で、何を話していいものか。表に出てこられなかった」と釈明した。
 健康被害が広がった原因について、「分からない。私自身、本当におびえている。(作業場が)危険だという認識は本当になかった」と頭を下げた。
 この問題をめぐっては、同社で働いた16人について27日付で労災が認定された。2月に30代男性が17人目として労災請求し、近く認定される見通し。厚労省の専門家検討会は14日、16人について、1、2ジクロロプロパンを高濃度で長い間吸い込んでいたことで胆管がんを発症した蓋然(がいぜん)性が極めて高いと結論づけた。

胆管がん、労災と通知 厚労省、大阪の印刷会社16人に

朝日新聞デジタル2013年03月27日  大阪市中央区の印刷会社「SANYO(サンヨー)―CYP(シーワィピー)」で働いて胆管がんになった16人(うち8人死亡)に対し、厚生労働省は27日、労災と認定した。同日午前、決定通知書を遺族や患者に送った。胆管がんでの労災認定は初めて。
 認定されると、国から療養費用や遺族年金が支払われる。16人はいずれも男性で、20代1人、30代7人、40代8人。国内の胆管がん死亡者は99・1%が50歳以上だが、同社では平均36歳で発症、37歳で死亡している。先月、30代男性が17人目として請求し、この男性も近く認定される見通し。
 厚労省は昨年9月、胆管がん発症者の労災認定に関する専門家検討会を発足。検討会は今月14日、印刷機のインクをふき取る洗浄剤に含まれた化学物質「1、2ジクロロプロパン」「ジクロロメタン」が発症原因になりうると指摘。SANYO社の16人は1、2ジクロロプロパンを高濃度で長期間吸い込んでいたことで発症した蓋然(がいぜん)性が極めて高いと結論づけた。
 同社以外にも全国の47人(32人死亡)が労災請求しており、厚労省の検討会が順次、認定の可否を検討する。2物質と胆管がんの関係はこれまで知られていなかったため、通常死後5年の労災請求権の時効は、3月15日から数え始める。

厚生労働省、全国16,000印刷業事業場の調査実施へ

PJ web news 2012年7月30日  厚生労働省は7月25日、大阪府の印刷事業場での胆管がんの発症を受けて実施している原因究明に関し、医学的調査の実施や全数調査等の取組みの具体的内容を発表した。さらに(社)日本印刷産業連合会に対しても7月23日付で同調査への周知を求める要請文を送付し、会員企業の積極的な協力を呼びかけている。
 印刷業に対する全数調査では、印刷業で洗浄作業を行う等の561事業場を対象に実施した一斉点検の結果を踏まえ、有機溶剤を使用するすべての事業場に対して有機溶剤中毒予防規則等の遵守を徹底させることを目的とし、全国の印刷業事業場(製本業及び6月に実施した一斉点検の対象事業場を除く)約16,000を対象に、7月下旬に調査票を送付して回答を求めていく。
 さらに有機則等に関する集団説明会を本年9月から10月にかけて全国各地で実施。その取組みの結果、法令の周知が十分でないと考えられる事業場等をリストアップし、労働基準監督官、労働衛生専門官等が個別に事業場を往訪し、有機則等の遵守状況を現場で確認、法令違反があれば是正措置を実行していく方針。

胆管がん 校正印刷以外で発症

NHK7月25日 12時6分  大阪や宮城などの印刷会社で、従業員らが相次いで「胆管がん」を発症して死亡した問題で、宮城で発症した2人は、塩素系の溶剤を大量に使う「校正印刷」ではなく、一般的な印刷作業しか行っていなかったことが新たに分かり、専門家は、より広い範囲で詳しい調査をすべきだとしています。
 この問題は、大阪や宮城など5つの都府県の印刷会社で、従業員ら17人が相次いで胆管がんを発症したもので、具体的な作業環境が明らかになった大阪の印刷会社では、がんになった12人が、いずれも校正印刷と呼ばれる塩素系の溶剤を大量に使ってインクの洗浄を繰り返す作業に関わっていたことが分かっています。
 これに対し、宮城の印刷会社では、この「校正印刷」を一切行っておらず、一般的な印刷作業をしていた従業員が発症していたことが、NHKの取材で新たに分かりました。
 この会社が使っていた塩素系の溶剤の量は、大阪の会社と比べ、一日当たり3分の2程度ですが、溶剤には、がんの発症の原因の1つではないかと指摘されている「ジクロロプロパン」という化学物質が大量に含まれ、その割合は90%を超えるということです。
 この問題に詳しい産業医科大学の熊谷信二准教授は、「一般の印刷会社でも、溶剤の種類や使用量によっては、胆管がんを発症する可能性があると思う。国や業界は、一般の印刷会社でも溶剤の使用量の多い会社を中心に、胆管がんになった人がいないか、さらに範囲を広げて調べるべきだ」としています。

厚生労働省、胆管がん問題で全国的な立入調査実施へ

PJ WEB news 2012年6月13日  厚生労働省は、大阪府の校正印刷会社の従業員が胆管がんを発症した問題に続き、東京都と宮城県の印刷会社2社でも同様に発症し、1名については死亡したとの相談があったと発表した。
 厚労省では大阪のケースも含め、現在のところ有機溶剤業務と胆管がん発症との因果関係は不明としている。しかし厚労省では、有害物に対する労働者のばく露防止の観点から、同種作業が想定される印刷業を対象に立ち入り調査を実施する方針を立て、全国の労働基準局長宛に通達した。実施期間は6月13日から同月29日まで。対象事業場については、有機溶剤を用いて校正印刷等の業務を行う労働者がいると考えられる事業場等としている。

厚生労働省、全国561印刷事業場の一斉点検結果を報告

PJ WEB news2012年7月10日  厚生労働省は7月10日、大阪の印刷事業場での胆管がんの発生を受けて全国561の印刷事業場を対象として実施していた一斉点検の結果を取りまとめ、以下の通り発表した。
(1)胆管がんの発症
 胆管がんを発症した者がいるとするのは3事業場、3人(東京、石川、静岡)であり、大阪、宮城の事業場以外に、複数の胆管がん患者が確認された事業場は無かった。
(2)有機溶剤中毒予防規則の適用状況等
 561事業場のうち、有機溶剤中毒予防規則(急性の有機溶剤中毒を予防する観点からの規制)の規制対象物質を使用していた事業場は494ヵ所、こうした事業場のうち何らかの問題が認められた事業場は383ヵ所(77.5%)であった。
(3)作業場所の状況
 外気と接していない地下室で作業を行っている事業場は無かった。また、地下室と同視できるような空間で作業を行っている事業場は9ヵ所であった。
(4)使用化学物質
 ジクロロメタンを使用している事業場は152ヵ所、1,2-ジクロロプロパンを使用している事業場は10ヵ所であった。  この調査結果を踏まえ厚労省は「現行法令等の遵守の徹底」、「有機塩素系洗浄剤のばく露低減化の予防的取組」、「職業性胆管がん相談窓口の設置」、「胆管がんの発症に関する疫学的調査の実施」の4点からなる対応策に取り組んでいく方針。

胆管がん さらに従業員ら5人発症

NHK 6月12日 21時54分  大阪府内にある印刷会社の元従業員5人が、胆管にできるがん=「胆管がん」を発症し、4人が死亡した問題で、この会社では、このほかにも、現在会社に勤めている従業員の男性ら5人が胆管がんを発症し、治療を受けるなどしていることが分かりました。
 これで胆管がんになった人は合わせて10人で、このうち5人が死亡しています。
 この問題は、大阪府内にある印刷会社で、平成15年までの13年間に、印刷機に付いたインクを洗浄する作業に1年以上関わっていた33人の従業員のうち、男性5人が胆管がんと診断され、このうち4人が死亡したことが、産業医科大学の調査で分かったもので、この職場での胆管がんによる死亡率を計算したところ、平均的な日本人男性の600倍以上になっていました。
 NHKがさらに会社の関係者に取材したところ、この5人以外にも、現在会社に勤めている従業員の男性3人と元従業員の男性2人の合わせて5人が胆管がんを発症していたことが分かりました。
 新たに分かった5人は、いずれも30代前半から40歳前後と、胆管がんとしては若い年齢で発症していて、このうち元従業員の男性1人は死亡しています。
 この5人も印刷機に付いたインクを洗浄する作業に関わっていたということで、これで、この会社で胆管がんを発症したのは、合わせて10人、このうち5人が死亡したことになります。
 これについて、会社の弁護士は「胆管がんを発症された人が何人に上るのか、現在、会社としても把握に努めていますが、はっきりとしたことは分かっていません。引き続き調査を進めたいと考えています」と話しています。

<胆管がん>4人死亡の会社を調査へ 厚労相

毎日新聞 5月22日(火)10時20分配信
 大阪市の校正印刷会社の元従業員4人が胆管がんで死亡した問題で、小宮山洋子厚生労働相は22日の閣議後の記者会見で「まずは現場の状況を調べ、(原因調査を)どのようにやっていくか検討する」と、会社工場の実態把握から調査を進める方針を明らかにした。

 印刷機の洗浄作業で使われた有機溶剤に含まれる化学物質が原因と推測されているが、小宮山厚労相は「全国には多くの印刷所があるが、ここだけで発生している。言われているものが原因として特定できるのかも調査していく」と述べた。【井崎憲】

胆管がん多発:死亡男性「有機溶剤で悪環境」

毎日新聞 2012年05月19日 02時31分  「元同僚が同じようながんで次々死んでいく」−−。西日本のオフセット印刷の校正印刷会社で、発症が相次いだ「胆管がん」。遺族らは厚生労働省に全容の解明と被害拡大の防止を求めている。
 きっかけは昨年春から、胆管がんのため40歳で死亡した男性の遺族らが熊谷信二・産業医科大准教授に相談したことだった。男性は両親に「職場は有機溶剤が漂い、環境が悪い」と言い退職した。5年後に胆管がんを発症すると、両親に同僚が同様の病気で若くして亡くなっていることを明かし、苦しみながら帰らぬ人となっていた。父は「人生半ばで亡くし非常にショックだったが、労働環境を改善してもらわねば」と調査を願った。
 熊谷准教授は、男性が受け取っていた年賀状をもとに、31歳で死亡した同僚の兄あてに手紙を送って調査の協力を依頼。その母親から電話で「実は、兄も弟と同じ会社に勤めていましたが、4年前に46歳で亡くなった。2人とも胆管がんでした」と告げられた。
 熊谷准教授が遺族らに手紙を書くなどして元従業員らに当たると、仕事中に吐き気がしたり、少しアルコールを飲んだだけで肌がまっ赤になる同僚もいて不思議だったなどとの証言も出てきた。遺族に病院への開示請求などをしてもらい、医学資料を集めると、5人が胆管がんにかかり、うち4人が死亡していた。
 息子2人を失った母親は「悔しくて無念です。これから働く人のために病気をなくしてほしい」と厚労省の調査の行方を見守っている。【大島秀利】

<胆管がん>校正印刷会社の元従業員4人が死亡

毎日新聞 5月19日(土)2時31分配信  西日本のオフセット校正印刷会社の工場で、1年以上働いた経験のある元従業員のうち、少なくとも5人が胆管がんを発症、4人が死亡していたことが、熊谷信二・産業医科大准教授(労働環境学)らの調査で分かった。作業時に使われた化学物質が原因と強く推測されるという。遺族らは労災認定を求め、厚生労働省は調査に乗り出した。

 熊谷准教授によると、同社では91〜03年、「校正印刷部門」で1年以上働いていた男性従業員が33人いた。発症当時の5人の年齢は25〜45歳と若く、入社から7〜19年目だった。熊谷准教授が今回の死亡者数を解析したところ、胆管とその周辺臓器で発生するがんによる日本人男性の平均死亡者数に比べ約600倍になった。

 校正印刷では、本印刷前に少数枚だけ印刷し色味や文字間違いなどを確認するが、印刷機に付いたインキを頻繁に洗うので結果的に洗浄剤を多用する。洗浄剤は、動物実験で肝臓にがんを発生させることが分かっている化学物質「1、2ジクロロプロパン」「ジクロロメタン」などを含む有機溶剤。会社側は防毒マスクを提供していなかったという。91〜03年当時、ジクロロメタンは厚労省規則で測定や発生源対策が求められていたが、1、2ジクロロプロパンは規制されていなかった。
 熊谷准教授は「これほど高率になると、偶然とは考えられず、業務に起因している。校正印刷会社は他にもあると聞いており調査が必要だ」と話す。
 元従業員らが労災認定を求めたことについて、会社側は「真摯(しんし)に対応させていただいている。個人情報などもあり、お答えできない」としている。【河内敏康、大島秀利】

 上島通浩・名古屋市立大教授(労働衛生)の話 大変重要な事例で、食事など地域性の要因も含め調査が必要だ。
 ◇胆管がん 
 胆管は肝臓で作った胆汁を十二指腸に運ぶ管状(長さ約8センチ)の器官。がんは上皮からできるとされる。胆管結石との関連も指摘されるが、原因は不明。日本人男性の年間死亡率は10万人あたり10.5人(05年)で、発生率は75歳以上で最も高い。